自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

課題を分解してみる

課題解決の提案をするなんて大層なことはできないので、

課題について、漠然と感じていることを分解して整理してみます。

 

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ひとつは、三島町は良くも悪くも、役場が入り込み過ぎている気がします。

工人さんたちの取りまとめと、活動拠点となっている生活工芸館の運営、

工人まつりの開催主体がすべて役場となっています。

現在の編み組細工は、行政の保護のもと成り立っているという点です。

もうひとつは、その体制から、工人さんは職業としての職人さんではなく、

個人単位でそれぞれの生活の中から部分的に活動するという点です。

 

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これ難しいところです。

個人の能力を活かしたフリーランスとしての働き方が拡大し、

企業で一律の働き方をするのではなく、ひとりがいくつかの仕事を掛け持ちする

働き方となっていくと予想されます。(自分もここを目指しているところもあり)

その中で、自分の技術と能力と裁量とキャラクターを活かして

場所や時間に捉われない働き方になったとき、現在の工人さんたちの

編み組細工との関わり方は理想的なところがあります。

そういう点では、この技術と能力を持った工人さんたちを

更に生き生きと活躍するためのフィールドの確立が求められているの

かもしれません。

 

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現在の三島町の工人さんは、各自山から素材を採ってきて、

各自が覚え学び盗み鍛えた技でものづくりをしています。

機械のような均一な正確性はつまらないし、手仕事だからこその

作り手が垣間見えるような味わいがたまらないのが魅力でもあります。

 

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一方、個人が強すぎて、「三島町の編み組細工」としての一体感が

感じられにくいという印象があります。

友の会の存在はありますが、材料の共同採取や購入、生活工芸館での販売、

編み組教室への参加が目的となっており、三島町の編み組細工全体の今後に

ついて活動をしているようにはちょっと感じられません。

 

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現在の厳しい資本主義経済の中、伝統的な手仕事によるものづくりが

存続してくためには、行政が保護していく、作り手もそれに依存するではなく、

その中を戦っていけるだけの商業的なノウハウやスキルも求められるのではないか。

編み組細工を町おこしの軸として人を呼び、雇用を生み、経済活性の手段と

するためには、産地としてある程度産業化していくべきなのではないかと思います。

そのために、個人活動のみだと規模に限界があるので、

何かしらの共同体運営への発展が必要になってくるのではないかなぁ。

 

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工人の高齢化、材料の減少、市場の縮小、後継者の不足等、

同時に三島町という自治体の活性化を解決するためには、

目の前のものづくり、作品のことを考える以上に、

三島町が誇る編み組細工という全体についての基盤を整え、

強化堅牢にしていく必要があるように感じます。

これだけたくさんの工人が揃い、貴重な手仕事技術が残るということは、

町の財産であり、他地域にはない町の特異性だと思うので、

これを発信していくことに力を合わせて賛同する共同体(組合?ギルド?)を

設立し、今までの在り方を変えていくべきではないかと思います。

 

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だいぶ陳腐で勝手な発言をしております。

これについては、きっと三島町関係者さんたちの中では

散々繰り広げられた点なのだろうなぁ。

自分が今後、どう貢献できるのか、どう関与してくのか全くわかりませんが、

大好きな、無限の可能性に溢れた三島町のこれからの発展を、

願って止まないのであります。

 

 

 

 

課題を提議してみる

三島町編み組細工の工人として、3か月時点で感じた課題について、

ちょっとまとめてみようと思います。

と言ってもまだたった3ヶ月なので、見えていないところも多いはず。

 

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伝統工芸にも指定されている三島町の編み組細工は、農村生活から生まれた

「生活工芸品」のため、それを専門とした「職人」がいないという特徴があります。

編み組細工に携わっている工人さんはたくさんいますが、

それを生業として、専門の職業としている人はほぼいません。

農作業が暮らしのメインにあり、その中でこれだけの工人さんを抱え、

活性化してきた文化であることはすごいと思います。

しかし、そのため「産業」として確立していないという実情があります。

携わる工人さんたちの編み組細工との距離感や向き合い方に

温度差?スタンスの違い?があるような印象なのです。

趣味として、ダブルワークとして、頼まれとして、

それぞれがそれぞれのペースと工程と技術で、個人的に

作っていることが多いという面が見えてきました。

 

平均年齢は70歳前後(推定)の現在編み組細工を担う工人さんたちにとって、

これから先、10年後の編み組細工への見通しについては、全体的に

ちょっと関心が薄いような気がします。

(もちろん問題視している工人さんもたくさんいます。)

 

今の生活の中での編み組細工との関りは、楽しく程よく、

山ぶどうのバッグもマタタビの米研ぎ笊も需要があるため、

山から素材を採るだけ採ってきて、作って売る。

それぞれが個人で取り組む三島町の編み組細工の未来について、

環境保護や素材作り、技の継承や編み組細工の発展について

どこか「無関心」な部分があるのかなぁという印象があります。


その課題に対して、工人さんたちで構成される生活工芸運動友の会では、

今までの採取で減少している編み組細工の材料の育成実験を始めています。

今まで必要となる分を採取し、先のことを考えて素材を育てることをして

こなかったため、三島町の山から素材がなくなってきてしまっている

(特に山ぶどう)という現実があります。

皮肉なことに、素材減少の原因は、現在の工人さんでもあるのです。

 

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山ぶどうを接ぎ木で育成中。

2016年11月に植えた木から芽が出ていました。

また、生活工芸アカデミー制度の開始による後継者育成もそのひとつです。

 

 

編み組細工の持続的な未来を考えると、

今後はさらに長期的な展望を持って向き合うことが重要です。

生活工芸アカデミー制度の設立も含め、三島町が編み組細工を中心に

地域創生を目指すにあたり、このあり方を見直していく

必要があるように感じました。

 

 

次の分解に続く→

 

自然素材の葛を学ぶ~知識編~

 

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かつて金谷掛川地区は、欧米向けに葛布の壁紙製造輸出の一大産地でした。

現在残る遠州地方の葛布工房は3つだけ。

主催の大井川葛布はそのひとつで、葛布製品の制作販売、

技術継承、歴史研究、情報発信等幅広く活動をされています。

 

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フレンドリーな親方と女将さんは、葛布に関するあらゆる情報を

惜しまずに、何でもかんでも細かくご教授くださいました。

自然布やファッション、伝統技術や民俗学に興味のある方には

とても濃密で興味深い内容です。

強く、参加をおススメします!

 

学んだ葛に関する知識を、簡単にまとめておくことにします。

 

 

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害草扱いされている葛って、実はすごいのですよ。

根っこは澱粉質がジャガイモ以上の葛粉に、

根を乾燥させると解熱剤の葛根湯に、

葉は家畜の大好物飼料になり、種から油が採れ、

強力な根を張る蔓は二酸化炭素吸引や土留めの緑化植物、

そして繊維はこんなに美しくて丈夫な葛布になるのです。

雑草なんてものじゃない!

余すところなく使える優秀な自然素材ではありませんか。

 

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その歴史は古く、6000~7000年前の時代から、

織り布としてはアジア最古のものなのです。(繊維としては大麻がもっと古い)

日本では、古墳の銅鏡包み、平安の貴族衣装、奈良の大仏材料、戦国の甲冑下着、

武士装束などに使われた葛布が見つかっています。

ワークショップではそんな貴重な葛織りものも見せていただきました。

千年以上経っているとは思えない、色と光沢。

繊維素材もしっかりとそのままの状態で残っています。

 

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その後、大麻や苧麻などの栽培植物繊維の拡大により、

衣服や織物としての葛布は衰退していきます。

軽くてサラっとシナっとスルっとした素材から、実は麻布や藤布と言われて

いる歴史的保存衣装も葛布だった、みたいなことがあるそうです。

 

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江戸時代後期の襖紙から葛布が見つかり、

明治維新以降外来文化の影響か、壁紙素材として使用されるようになりました。

戦後は主に輸出壁紙材として全盛を迎えることとなりますが、

昭和40年代には円高の影響で一気に衰退を迎えることになります。

米国元大統領、欧米VIP館、国内では博物館や美術館の壁紙として

葛布の需要が多かったそうです。

 

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親方の研究熱心なこと。

ただ葛布を織るだけではなく、国内外各地に飛んで葛布の研究に勤しんでいます。

時代の流れから縮小した葛布の再考に向けて、

歴史研究、後継者育成、技術継承、制作販売等幅広く取り組みをされている

活動内容には、私が現在携わっている編み組細工の今後を

考える上でもとても勉強になる時間でした。

 

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このワークショップの開催趣旨は、葛布の継承と発展、

そして、手仕事の復権をとおして新しい時代のパラダイムを見通すことでした。

衣類も、食べ物も、住まいも、生活雑貨も、

豊かな自然の中に自生している植物からいただいた素材から

暮らしに必要となるものを作ってきた日本。

葛布を介し、自然と共存した新しい時代の生き方について

考えさせていただきましたーー!

 

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参加者は遠い方で福岡大阪など、各地から織りや染めに興味のある方が20名ほど。

皆さんの経験や情報もとても興味深く、5日間は内容が濃すぎてあっという間でした。

この尊い葛布の価値を共有した参加者のみなさまと、

たくさんの智慧と哲学をご教授いただきました親方と女将さんに、

心から感謝します。ありがとうございました!

 

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自然素材の葛を学ぶ~後編~

葛苧にするところまでが、材料採取期の夏場の作業です。

この期間に1年分をすべて採取するため、毎日のように

葛と天気の状態、室と川の状態を確認して材料採取に明け暮れます。

自然素材を対象にしている編み組細工の材料採取と一緒です。

 

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シーズンオフになると、1年かけて糸を績んで布に織りあげていきます。

会津は豪雪地帯なので、冬場の農閑期の仕事としてものづくりがありますが、

冬場も温かく気温が安定している遠州地方では、一年中農作物が育つため、

糸績みや織りは農作業を終えた夜の仕事だったそうです。

農家の女性のおこずかい稼ぎでもあったようです。


前編からの続きです。

 

 

6.糸績み

 

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葛苧を用途に沿った幅(私は今回1㎜~3㎜くらい)に指先や針で裂いていきます。

指で裂いた繊維の尾と頭を「葛布結び」で結繋いでいきます。

繊維の長さがどんなに短くても、一本一本を繋いでいけば

一本の葛糸になります。貴重な素材はどんなに短くても無駄にはしません。

糸を結う時には、繊維が絡みやすくなるよう乾いた指先と葛糸の潤滑油として、

唾を付けます。

 

糸正直

土台となる糸の質が、作品の良し悪しを決める。

均等で平らな糸が績めてこその、美しい織りになるのです。

 

裂いていくのも、結っていくのも、根気のいる細やかな作業です。

この作業をなるべく少なくするためにも、枝分かれや根分けしてない

長くて真っすぐな繊維を採取することが大事なのです。

材料採取によって、後の作業負担や作品の品質等、

すべてに影響してくるので、これだけは何年かかけて経験を

重ねて学ぶしかないようです。

 

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糸を結っていくとき、苧桶という箱を用意します。

左に裂いた繊維を、右に結った糸を、上からふんわり重ねて入れていきます。

わたくしかつて、栃木県那須大麻博物館館長が開催している

麻糸を績むよりひめ講座を受講したことがありますが、

麻糸(からむしも同じかな)績みよりかは、葛糸結びの方が断然楽です。

 

 

7.ツグリ作り

 

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葛糸を八の字に巻いて「ツグリ」を作ります。

これは、織るための舟形の杼(シャトル)に、糸がからまらないように

設置するため、糸の束をまとめたものです。

 

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苧桶をひっくり返して取り出した糸の塊から、

太さもまばらで、結び目も頼りない繊細な(下手ともいう)糸を

からまらないように一本引き出していく作業はとっても慎重。

重しには米ぬか(または小豆)を使います。

ポイントは、常に中心軸に沿わせて糸を巻いていくこと。

これを誤ると、後々とんでもなく痛い目みることになりました。

経験から、学ぶのです。


8.葛布織り

 

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さて、いよいよハイライト!

よく体験である機織りはこれですが、布になるまでの機織りは全体の1割ほど。

編み組細工もそうですが、材料作りが全体の9割以上です。

編む織る技術はもちろん作品に影響しますが、

まずは良い材料が揃えられない限りはここにも至れません。


このワークショップでも、織るのは3時間ほどでした。

(経糸の整経はすでに済んだ状態で織り始め。ありがたいです。

整経が入ると、この工程もまたとても大変なのです。)

 

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経糸は紡績木綿糸を使用。

作品によっては、手繰りの木綿糸を経糸に使うこともあるそうです。

木綿の糸繰り工程を女将さんが見せてくれました。

 

 

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今回私がお世話になった機。葛布は基本高機のようです。

織る時はツグリを水で湿らせます。

乾燥すると布が波打ってしまうので、湿り気を絶やさないことが大事。

編み組細工でも、水加減によってやり易さや作品の表情がだいぶ影響します。

 

 

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シュッ、トントン。

つぐりを入れた杼を経糸に通し、軽く叩く。

葛布の特徴は、撚りをかけない平糸で織っていくことです。

艶やかな平糸を潰さないように織っていくことで、光沢感が浮き上がって、

キラキラとした美しい布に織りあがります。

 

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今回は途中で葛苧をインド藍(青)とウコン(黄)で染めました。

藍で染めた葛糸を途中で織りこんでみました。

 

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9.房処理と砧打ち

 

織りあがった布の両端の経糸は、好みの本数ずつ束ね、

解けぬように房を作ります。

飛び出た端部分をすべて鋏で切り落とし、最後の仕上げとして砧打ち。

 

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布を強く丈夫にし、光沢を出すために、木槌で糸を叩いていきます。

織りの歪みが出ていた布が、真っすぐ艶っとした光沢を持ちました。

 

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ちょっと引きがきつかったり、糸が乾燥していたり、

結びが綻んでいたり、機を踏み間違ったり、

素直に正直に全部が布の表情となっています。うん、愛おしい。

 

 

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葛布の修了書!

こんな小さな布が仕上がるのに、なんとたくさんの工程があることでしょう。

邪魔扱いの雑草からこんな素敵な繊維が生まれること、

自然の神秘と限りない可能性を感じる、素晴らしいワークショップでした♪

 

 

 

自然素材の葛を学ぶ~前編~

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夏休み前の道普請の際にもたくさん刈り込んでいた「葛」。

遠目に見ると、蔓状で葉の形は山ブドウにとてもよく似ています。

恐ろしく強い生命力を持ち、どこにでも蔓延る植物です。

夏休み勝手に自由研究で、この自然素材で織られた「葛布」を勉強してきました。

 

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静岡県金谷にある大井川葛布で開催された、5日間のワークショップ

参加してきました。

認識していないと気づきませんが、東名高速の沿道には葛が延々と生えています。

金谷掛川遠州は葛布産地として日本国内でも数少ない葛布が残っている

貴重な地域です。

 

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三島町の編み組細工素材同様、水上がりが良くて繊維が剥きやすい

6月~8月が葛素材の収穫期。

5日間で、葛を採取、室を作って発酵、川で繊維を洗い出し、

糸を績んで織るという内容になっています。

座学による葛の歴史や変遷、古い葛織りの事例紹介等、とても充実した内容で、

参加しているみなさんの学習欲も刺激になりました。

 

葛の採取から布になるまでをまとめます。

自分の復習のため、学んだポイントを詳細に書き込んでいきますー。

 

1.葛の採取

 

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アカソもカラムシもそうだったように、できるだけ枝分かれのない、

真っすぐなものを採取します。

葛は斜面に生えていることが多いですが、糸にするためには

なるべく真っすぐに伸びた柔らかい蔓を採取する必要があります。

蔓を切ってみるとわかるのですが、中心部に白っぽい硬い芯が

あるものはうまく繊維が剥けないため、切ると緑色の若くて

瑞々しい蔓を選ぶことがポイントです。

 

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採取した蔓の繊維を傷つけないよう、葉柄を鋏で切り落とします。

この時、繊維を剥き取っていくときに尾(根っこ)と頭(先端)の

区別がつくように、尾には斜めに切り込みを入れ、頭は二節ほど落として

平らに切り込みを入れていました。

 

2.煮沸

 

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葉を落とした蔓をリース状に丸めて束ね、沸騰したお湯の中で

1時間~2時間ほど茹でます。

茹で上がってくると、枝豆のような、サツマイモのような、

甘くてホカホカした香りが立ち始めます。

 

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蔓をちょっと触ってみて、外皮がぐずっとぬるっと手で解せる具合に

なったら引き上げ時です。

お湯から上げて、水に浸けて冷まします。

 

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3.室作りと発酵

 

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葛の採取と一緒に、ススキをたくさん刈り取りました。葦でもいいそうです。

採ってきたススキでベッドを作り、葛の寝床となる室に

冷ました葛を並べて寝かせます。

ススキに付いている枯草菌により、葛の外皮を分解、

繊維をやわらかく発酵させるようです。

 

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上からもススキを被せ、ビニールシートやござを掛けて密封します。

この発酵具合が糸の良し悪しを決めるので、室から出すタイミングは

とっても大事。発酵温度は38~40度くらいなので、ススキの間に手を突っ込んで

発酵具合を確認します。

7月8月の気温が高い時期は中2日くらい、6月だと中5日くらいが目安です。

 

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2日置いて発酵が進んだ葛。

表面には白い糸が膜を張っています。臭いは全然気になりません。

この発酵については、土に埋めたり、米ぬかで発酵させたり、

発酵せずに煮立たせて繊維を採ったりと色々な手法があるそうですが、

この方法が、ここ大井川葛布の特徴だそうです。

 

4.繊維洗い

発酵を止めるために、室から出したらすぐに川で洗います。

ポイントは乾燥させないこと。

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発酵が進んで葛の外皮はぐずぐずドロドロにふやけてこそぎ落せます。

山ぶどうの外皮と同じで、この外皮を「くそかわ」と呼ぶそうです。

 

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川の中で泳がせながら、ボロボロと皮を洗い取っていくので、

流水が欠かせません。

 

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くそかわを落とした後の表面に出てくる、薄くて柔らかい皮を、

水中で蔓に沿って根元から手で剥がしとっていきます。

芯から皮を剥ぎ、ワタや汚れを洗い流します。

 

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これが葛糸の繊維となる「葛苧」です。

きれいな水の流れと日光が当たることで、繊維が漂白されて白くなるのです。

太陽光が当たると川の流れの中でキラキラ光ります。美しい。。

大麻がゴールド、苧麻がシルバー、葛はプラチナの輝き。

これ、昭和村カラムシの雪晒しとか、沖縄八重山上布の海晒しと同じ効果ですね。

洗いの作業は真夏の太陽が燦々と降り注ぐような快晴の日にやるほど、

白くて上質な糸になるそうです。

 

5.乾燥

 

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洗い終えた葛苧は、少量ずつ束ねて草の上で乾燥させてあげます。

この日はあいにく雨が降ってきてしまいました。

持ち帰って、室内日陰干しで乾かしました。

 

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乾燥して出来上がった葛苧がこれ。

見てくださいこの光沢感。すごいキラッキラ艶っ艶。

あんなどこにでも蔓延る迷惑雑草から、こんなに上品で繊細で華麗な

繊維が生まれるのです!!何ということだ。。

 

編み組細工で使うヒロロやアカソやモワダとは違い、

木綿や絹やカラムシともちょっと違う、

そんなに硬くも強くもない繊維なのですが、

コシコシテヤテヤキチキチとした感触で、見た目の華麗さとギャップのある、

気高さと逞しさを感じる素材です。(伝わるかな…)

 

 

苧績み~織りについては後半に続きます。

 

 

 

 

能と美学

能って、一度観たことあるけど、なんとも単調で、意味不明で、

途中から記憶が、、ない。

教養浅はかなわたくしは、未だ能への理解がありません。

 

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三島町で活動する能面師さんのお家にお邪魔してきました。

お家の前にはたくさんの樹が積み重なっています。

先日入荷した大量の桜の木を、ひとつひとつご本人が確認しながら

製材していくそうです。

どんなに小さな端材でも、「良い樹」は愛着を感じて捨てられない。

どんどん溜まっていく木材で溺れそうになっている工房から、

たくさんのお面や仏像が生まれていました。

 

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能面師さんは大学生時代経済を学び公務員へ、

全く能やものづくりとは関係ない世界を生きていました。

若いころはアメリカへの憧れが強く、ロックを愛し、

ビートルズに熱狂、分かり易くインパクトのある西洋文化に

夢中になっていたようです。

西洋音楽の「律」に没頭するほどに、日本の音律の奥深さに惹かれ、

能楽と出逢うことになりました。

 

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床の間には掛け軸、立花、香炉が、静かに飾られています。

能面を表に出すときには、場を整えるところから。

と、白檀の香木を削って香を焚いてくれました。

うっとりしてしまう柔らかい空気感。なんとも安らかで、贅沢。

 


何もないところで挑戦がしたかった。

 

先入観も、固定概念も、誰も自分を知る人がいないところで、

ゼロからの挑戦がしてみたかった。

堅い家柄から安定した職に就く中で、

このままの自分では違うという危機感から飛び込んだのが、

能面を創るという世界でした。

 

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究極の美を求め、自然との調和を求め、30歳で三島町に移住。

なぜ三島町だったのか?

 

深い雪に覆われ、厳しい環境の中逞しく生きる三島町の人は、

「本当に美しいもの」が何かを知っていたと言います。

自然の摂理を身を持って理解し、生き抜く知恵と力を

備えた三島町の人は、能面師さんにとって、生き方を学び、

技と感性を鍛え、導いてくださる存在だったそうです。

 

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深い深い雪の中で、暮らしのあらゆるものを自然からいただいてきた

三島町には、生まれや育ちには関係ない、

本質を見極める力が備わっていたのかもしれません。

自然の厳しさを、美しさを、尊さを、暮らしの中から知っているからこそ、

研ぎ澄まされた五感で美しさの本質を受け取る。

そんな三島町の人に惚れ、魅せられて、助けられて今があるそうです。

 

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能面ひとつの表情を生み出すために、休む暇なく勉強の毎日です。

自身で能の演じ手となり、雅楽を嗜み、

日本の歴史を紐解き、物語を理解し、全体を網羅して初めて

その面の表情が浮き立ってくる。

すでに存在する歴史や文書は、誰かの考察や思想というフィルターを通して

「編集」されたものである。

だからこそ、本質的なものが何なのかは、正しいことは何なのかは、

ご自身で勉強し、納得するところまで理解を深める。

そのため、書斎には楽譜、茶、書、華、神話、哲学…幅広い分野の古文書が

たくさん積まれていました。

 

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面を作るためには、能の背景にある世界観を知らなければ本物には至れない。

表現を磨くためには能楽と向かい合うだけではなく、

膨大に連動する要素、属性、機能を細分化して網羅していくという

アプローチがあることを学びました。

 


対象となる「良いもの」を作る技術は前提として、

作り手自身の美学と哲学までも乗せて、相手に届くように創るということ。

同時に、お手軽に知識や情報が得られるからこそ、

それを選択する側の教養も求められて来るようになるのだろうと思います。

本物に正解はないし、限もないので、どこまででいい、どれがいいと

判断するのはそれぞれの自由。

 

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編み組細工と分野は違えど、三島町で輝くひとりの工人さん。

ひとつの面に向ける情熱を感じられたことがうれしかったです。

(発展途上ですが)技術を駆使して、自分の想いやセンスを生かすに加え、

編み組細工の歴史、暮らし、用途、思想、未来までも取り込めるような

作品を、作れるようになりたいなぁ。

がんばります!!

 

 

 

 

 

ライフスタイルのものづくり

 

伝統的なものづくりとは

高度で正確な手の技であり、

日本の自然が育んできた素材であり、

ものづくりに携わる人の魂であり。。。

 

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今なぜこれだけ、伝統的なものづくりが注目を集め、

その技術の継承に力を入れようとしているのかを、

一端にわずかばかり足を突っ込んでいる自分なりに少し考えてみました。

 

まず、ものづくりの対象が編み組細工でも、織りでも、染めでも、

和紙でも、漆でも、陶器でも、共通点があるように思います。

自然豊かな、日本という国土から採れた自然の素材を活かし、

智慧と叡智と美学により、暮らしをより豊かするためのものや雅な美を

「人の手から生み出している」という面が、

日本で昔から時間を掛けて受け継がれ、育まれてきたものづくりにあります。

 

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現代の、特に都心部での生活で忘れつつある、

自分たちが「自然の中で生かされている」という事実、

自然からの恩恵を、昔から守られてきているものづくりの中に、

生きものとして本質的に求めているところがあるのではないかと、

感じたりしているのです。

 

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政治も経済もITも金融もものすごい成長で国を豊かにしました。

その背景で、忙しない時間の流れに疲弊する人、情報に翻弄される人、

忙しいスピードや、機械的で人工的な流れに違和感を感じる人が

増えているような印象があります。

その社会の中で、伝統的なものづくりを通して私たちが夢見ているものは、

目の前にあって、すぐ横にあって、守られている、当たり前の「自然」という

存在を忘れずに生きていく、そんな「ライフスタイル=生き方」なのではないか

と感じるのです。

 

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自然からの恵みに、贅沢な時間を掛けて丁寧に作られたものを介して、

忙しない現代社会の流れから難しくなった、ものと時間と人との向き合い方

への敬意と憧れのようなものを求めているような気がします。

 

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伝統的なものづくりを、装飾品としての美しさとして捉える側面があり、

人の手から編み出される高度な技術として捉える側面もあり、

その背景にある、今最も手に入れることが難しい「時間」を

ふんだんに費やした、贅沢極まりない手仕事の一品へ、

懐かしい未来への可能性を夢見ているのかもしれない。

憧れのライフスタイルが、もしかしたら、

一周も二周も回って、何も変わらない深い山の中に戻ってきたのかも…。

 

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なーーーんて、ヒロロ編みながらこんなこと考えてみる。

伝統的ものづくりと言っても、私がちょびっと知っているのは

三島町の編み組細工という伝統工芸品の一部だけ。

 

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日々アップデートされていく最新情報にキャッチアップしてことは、

その変化に追いついていくために走り続けていなければいけないのですよ。

 

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今も、昔も、ずっと変わらないこと。

かたちを変えながらも、今も残るということ。

変わらないことを、変わらないかたちで、これからも守り続けていくこと。

変わらないからこその、安心感と帰巣感。

 

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刹那的なものが多い現代だからこそ、確実に実感できることが

少ない現代だからこそ、根本的な自然というものに、

畏敬の念を覚えるのかもしれない。

 

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ツールは変わっても、本質的な心の在り処を、

大切にしていきたいなぁと、思うのでした。

2020年東京オリンピックに向けて、

日本はどんな風に変化していくのでしょうね~。