自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

手で習う、縄綯い

編み組細工のカリキュラムで、はじめの3か月間はヒロロ細工に取り組みます。

ヒロロは前回紹介したように、細い繊維を綯って縄をつくり、

縄を経糸に、モワダやアカソ、カラムシなどを横糸に編み込んでいきます。

 

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すべての基本となる縄綯いからスタートです。

少し前の農村部では、生活の中で必要になる蓑、草履、笠、入れ物、敷物、、

などはすべて稲わらを綯った縄から作っていたので、

山村の大先生たちは呼吸をするように、スルスルと綯っていきます。

早すぎて見えない手元の動きが美しすぎます!

 

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アカデミーカリキュラムでは、何十年の経験を持つ強者工人たちが

先生として(伝統工芸士含む)、一流の技を教えてくれます。


先生である工人さんはみんな、技術を正式に習ってきたわけではないのです。

家の囲炉裏で両親や祖父母がやっているのを隣でみて、見よう見まねで習い、

盗み、使い勝手や耐久の具合で、その都度研究と改良を続けて、

それぞれが独自に磨いてきた、「わざ」なのです。

そのため、先生によってそれぞれ教えてくださる技術が多少異なります。

ちょっとしたコツやポイントを、それぞれの経験から編み出した方法で指導されます。

もちろん、文書化された、丁寧に指示されたような教科書や指導書、

マニュアルなんてものはありません。

 

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今まで当たり前のように、暮らしの一部としてものづくりに携わってきた

工人さんたちは、みなさん「ものづくりのプロ」であり、

「教える」プロではないのです。だから、言葉での説明は多くありません。

言葉で説明されてもわからない(笑)

見て、やってみて、試して、調整して、自分の手で感覚を掴んでいくしか

ありません。

 

 

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ところで私、前職に商社の管理部門で、不正が起こらないためのリスク管理

仕事に携わっていました。

業務の適正を確保するために、会社という組織の中で、守るべきルールとなる

規程や業務プロセス、マニュアルを整備して運用するという内容です。

いつでもどこから誰が見ても間違いや不正が起きないよう、客観的にわかりやすく

明確な「マニュアル」が業務の基本であり、だからこそ、ある意味、

そのマニュアルさえあれば、誰がやっても同じ業務ができるのです。

それがリスクヘッジとなり、企業への信頼や安心安全を保証していたのです。

 

てしごとって、縄綯いひとつにしても、絶対マニュアル化できないものだと感じます。

こうやってやる、と指導はされても、力加減やしなり具合、弾力や伸縮具合など、

ほんの小さな感覚が作品の表情に顕著に反映されるので、それだけは

自分の手と身体で覚え、磨き、育て、蓄えるものであり、

工業製品との一番の違いでもあり、工人の体温を感じるような、

てしごとでのものづくりの一番の魅力になります。


工程のひとつひとつが工人さんの試行錯誤の結晶であり、生き方であり、

万人ができる一般技術にはない、歴史と時間を掛けて磨き上げた熟練の技、

魂だと感じました。

 

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口承で、手わざで守り伝わる中で、携わる人により代々磨かれてきたこの技。

だからこそ、その技を持った人が生きている間に受け継いでいかないと、

文書化できるものでないからこそ、一度途絶えてしまうと

消滅してしまうのではないかと、焦燥感があります。

 

その技を守り伝えることは、先人が限られた環境で、針金も接着剤もない時代に、

「何もない」ところから、生きるという欲求から、「創り出してきた」という

過去への敬意でもあると思います。

 

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まだまだ縒れたり割けたり丸まったり、たった一本の縄を綯うのにも

苦戦していますが、頼りない一本一本のヒロロが縒り合って強靭な縄と

なっていくように、ひとつひとつ経験を重ね、しなやかで強くて長い、

自分のわざと人生を綯っていきたいと思います。