自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

虫送り

旧暦で、田植えを終えた早苗饗(さなぶり)の時期に、

農作物の害虫を駆除し、その年の豊作を祈願する「虫送り」という

伝統的なお祭りが行われます。

現在三島町でこのお祭りが残るのは3つの集落のみ。

今回はそのひとつ、名入集落の虫送りに参加してきました。

 

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里山での生活は、常に虫との共存です。

カメムシ、蜂、テントウムシ、毛虫、蟻、蜘蛛、ムカデ、メジロ

私たちの貴重な食料となる予定のお野菜の苗も、

毎朝夕方と、虫さんたちと一進一退の攻防を繰り広げています。

 

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すでにたくさんの虫さんを殺めました。

できればなるべく殺さずに逃がしたいものですが、

ここで暮らしていると、何と言うか、

殺生への罪悪感や後ろめたさのようなものは不思議と感じず、

この虫との距離感や関係性こそが、自然の循環の中の一部だという

感覚になるのです。

ともあれ、これから夏に向けての豊作のためにも、

今まで殺めた虫さんたちへの供養のためにも、虫送りに参加してきました。

 

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このお祭りは、主に集落の子供会の最年長者である中学3年生が指揮を執り、

集落の子供たちだけで祭りを運営することとなっているそうです。

祭りの装飾となる山車、幟、虫かご、提灯の制作、

供養する虫の採取(虫かごの中には実際に畑や田んぼから捕まえてきた

生きた虫が入っています)、掛け声や歌の段取り、お金の管理まで

すべて子供たちが行います。

これが子供同士での上下関係、企画の運営進行、

自分たちの集落での役割や責任などを学ぶ成長への通過儀礼とも

なっているそうです。

 

しかし、少子化が進む三島町では、現在名入集落に実際に住んでいる子供は

全部で4人。近隣の小中学生が助っ人で総動員します。

 

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かつては、この時期に収穫期を迎える麦の穂で作っていたそうですが、

現在は稲わらで作った虫かご。

子供たちが書いた「虫送り」のお習字が、お札のように張り付いています。

 

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天下泰平五穀豊穣萬悪虫送り

と書かれた幟を持った先頭の子の掛け声につられ、太鼓を乗せた山車と共に、

自作イラストの入った可愛い提灯を下げてみんなで町を練り歩きます。

 

 

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集落の上から下に向けて、境界から境界まで歩き、集落から虫を追い払います。

陽が落ちて薄暗くなった集落のなか、ぼわっと灯る提灯の明かりが美しいです。

 

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歩き終わった最後には、お祭りで使った提灯と虫かごを燃やし、

供養の意味を込めて虫さんたちを天に召します。

なんとも幻想的なのでしょう。

 

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ただ、ただ、ゆっくりのんびり町内を歩くだけなのです。

それなのに、この満たされた、ぽっと温かい心の喜びは、なぜなのでしょう。

ずーーーと昔から、この地で暮らす人たちが、

自然と一緒に生きる中で、自然に敬意を示し、住民同士が幸せに

生きることを願って続けてきたこのお祭りに自分が参加できたこと、

自分がここにいる偶然の必然の運命が、なんだか不思議で尊いです。

 

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三島町に来ることがなかったら知らなかったこの小さな、

素朴で清らかな夏の始まりに、なんだかとてつもない幸せを感じた夜でした。