自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

伝統工芸士 五十嵐文吾さん

軽快で溌剌と工房に迎えてくださった、マタタビ細工伝統工芸士の

五十嵐文吾さん。

なんと、大正11年生まれの94歳!

とは思えない、希望に溢れた第一印象の方でした。

 

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現在町内に10名の伝統工芸士がいますが、三島町編み組細工初代伝統工芸士です。

最近は、文吾さんが育てたお弟子さんたちが伝統工芸士と認定され、

2代目3代目くらいが中心となって活躍していることもあり、

文吾さんはご自宅の工房でコツコツとひとり作業に取り掛かっております。

外はずっと雨が降り続く中、薪ストーブを隣に抱えた工房は、

なんだか柔らかくて温かい居心地の良い空気です。

 

文吾さんが作品を作るうえで大切にしているのは、ただただ、

使う人が心地よく、長持ちして、寿命がなく、丈夫であること。

そこに、かかる手間や時間や労力は考えていないとのこと。

ただ、ご自身が、人より立派な「よいもの」だという自信のある、

誇りを持って出せるものだけを作っているそうです。

そのため、文吾さんの作品のお値段はお客さんが決めます。

付いた値段に対してではなく、ご自身の作品をお金を払って購入してくれる

人がいることが、何よりありがたいと、うれしさいっぱいの笑顔が

とても印象的でした。

 

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文吾さんは編み組細工を始めて40年以上経ち、ご自身が納得できる作品が

できるようになるまで10年以上かかったそうです。

誰に習うでもなく、両親がやっているのを見よう見まねで始め、

作り続ける中で反省と勉強と改良を重ね、現在の作品に辿り着きました。

文吾さんは、この秘訣については誰にも教えません。

より良い作品を作るための技は、「習う」ものではなく、

自分から研究を重ねて学ぶべきものだと、はっきり言われてしまいました。

 

確かに、文吾さんも含めて出逢った多くの工人さんたちは、

みなさん本当に勉強熱心だと感じます。そして、作品への意見と

素直に向き合い、ご自身の中で咀嚼して、消化する。

常に常に目の前の作品の問題点と向き合い、PDCAを繰り返して

作品を磨き続けています。

 

「作れば作るほど難しくなるのが作品だ。」

 

そこには、今までの生き方、哲学、思想、誇りのような、

習っただけでは決して習得できない、文吾さんならではの人間味が詰まった、

まさに文吾さんの分身のような、人生の一片が滲み出ていました。

 

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最後に、これから1年編み組細工を学ぶアカデミー生に期待することを

質問してみました。

 

「個性が入るような作品を作れるようになって欲しい。」

 

型を守って型に就き

型を破って型へ出て

型を離れて型を生む

 

基本の技を修得し、それぞれの生き方が表れるような、

手にした人が心を動かされる作品を作れるようになること。

丈夫なものを、見た目がキレイなものを計測や型を使って

作ることは誰にでもできる。

工人の手で、経験で、生き方で、誰にも真似できない、

誰にも負けない個有の作品は、技は、デザインは、

死んだらなくなってしまうような、まさに工人そのままなのだと感じました。

 

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ひとつひとつ、工人さんひとりひとりの人生の一時をかけて生み出している

編み組細工。

何かのご縁やときめきで手にした方は、作り手の工人さんとの出逢いを、

作品を通して大切に大切に育てて温めていただきたいと思いました。

 

やっぱり、「ものづくり」が生み出す感動が大好きだ~!!


五十嵐文吾さん作品が手に入るお店

346@東京西荻窪