自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

自然素材の葛を学ぶ~前編~

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夏休み前の道普請の際にもたくさん刈り込んでいた「葛」。

遠目に見ると、蔓状で葉の形は山ブドウにとてもよく似ています。

恐ろしく強い生命力を持ち、どこにでも蔓延る植物です。

夏休み勝手に自由研究で、この自然素材で織られた「葛布」を勉強してきました。

 

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静岡県金谷にある大井川葛布で開催された、5日間のワークショップ

参加してきました。

認識していないと気づきませんが、東名高速の沿道には葛が延々と生えています。

金谷掛川遠州は葛布産地として日本国内でも数少ない葛布が残っている

貴重な地域です。

 

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三島町の編み組細工素材同様、水上がりが良くて繊維が剥きやすい

6月~8月が葛素材の収穫期。

5日間で、葛を採取、室を作って発酵、川で繊維を洗い出し、

糸を績んで織るという内容になっています。

座学による葛の歴史や変遷、古い葛織りの事例紹介等、とても充実した内容で、

参加しているみなさんの学習欲も刺激になりました。

 

葛の採取から布になるまでをまとめます。

自分の復習のため、学んだポイントを詳細に書き込んでいきますー。

 

1.葛の採取

 

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アカソもカラムシもそうだったように、できるだけ枝分かれのない、

真っすぐなものを採取します。

葛は斜面に生えていることが多いですが、糸にするためには

なるべく真っすぐに伸びた柔らかい蔓を採取する必要があります。

蔓を切ってみるとわかるのですが、中心部に白っぽい硬い芯が

あるものはうまく繊維が剥けないため、切ると緑色の若くて

瑞々しい蔓を選ぶことがポイントです。

 

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採取した蔓の繊維を傷つけないよう、葉柄を鋏で切り落とします。

この時、繊維を剥き取っていくときに尾(根っこ)と頭(先端)の

区別がつくように、尾には斜めに切り込みを入れ、頭は二節ほど落として

平らに切り込みを入れていました。

 

2.煮沸

 

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葉を落とした蔓をリース状に丸めて束ね、沸騰したお湯の中で

1時間~2時間ほど茹でます。

茹で上がってくると、枝豆のような、サツマイモのような、

甘くてホカホカした香りが立ち始めます。

 

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蔓をちょっと触ってみて、外皮がぐずっとぬるっと手で解せる具合に

なったら引き上げ時です。

お湯から上げて、水に浸けて冷まします。

 

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3.室作りと発酵

 

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葛の採取と一緒に、ススキをたくさん刈り取りました。葦でもいいそうです。

採ってきたススキでベッドを作り、葛の寝床となる室に

冷ました葛を並べて寝かせます。

ススキに付いている枯草菌により、葛の外皮を分解、

繊維をやわらかく発酵させるようです。

 

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上からもススキを被せ、ビニールシートやござを掛けて密封します。

この発酵具合が糸の良し悪しを決めるので、室から出すタイミングは

とっても大事。発酵温度は38~40度くらいなので、ススキの間に手を突っ込んで

発酵具合を確認します。

7月8月の気温が高い時期は中2日くらい、6月だと中5日くらいが目安です。

 

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2日置いて発酵が進んだ葛。

表面には白い糸が膜を張っています。臭いは全然気になりません。

この発酵については、土に埋めたり、米ぬかで発酵させたり、

発酵せずに煮立たせて繊維を採ったりと色々な手法があるそうですが、

この方法が、ここ大井川葛布の特徴だそうです。

 

4.繊維洗い

発酵を止めるために、室から出したらすぐに川で洗います。

ポイントは乾燥させないこと。

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発酵が進んで葛の外皮はぐずぐずドロドロにふやけてこそぎ落せます。

山ぶどうの外皮と同じで、この外皮を「くそかわ」と呼ぶそうです。

 

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川の中で泳がせながら、ボロボロと皮を洗い取っていくので、

流水が欠かせません。

 

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くそかわを落とした後の表面に出てくる、薄くて柔らかい皮を、

水中で蔓に沿って根元から手で剥がしとっていきます。

芯から皮を剥ぎ、ワタや汚れを洗い流します。

 

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これが葛糸の繊維となる「葛苧」です。

きれいな水の流れと日光が当たることで、繊維が漂白されて白くなるのです。

太陽光が当たると川の流れの中でキラキラ光ります。美しい。。

大麻がゴールド、苧麻がシルバー、葛はプラチナの輝き。

これ、昭和村カラムシの雪晒しとか、沖縄八重山上布の海晒しと同じ効果ですね。

洗いの作業は真夏の太陽が燦々と降り注ぐような快晴の日にやるほど、

白くて上質な糸になるそうです。

 

5.乾燥

 

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洗い終えた葛苧は、少量ずつ束ねて草の上で乾燥させてあげます。

この日はあいにく雨が降ってきてしまいました。

持ち帰って、室内日陰干しで乾かしました。

 

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乾燥して出来上がった葛苧がこれ。

見てくださいこの光沢感。すごいキラッキラ艶っ艶。

あんなどこにでも蔓延る迷惑雑草から、こんなに上品で繊細で華麗な

繊維が生まれるのです!!何ということだ。。

 

編み組細工で使うヒロロやアカソやモワダとは違い、

木綿や絹やカラムシともちょっと違う、

そんなに硬くも強くもない繊維なのですが、

コシコシテヤテヤキチキチとした感触で、見た目の華麗さとギャップのある、

気高さと逞しさを感じる素材です。(伝わるかな…)

 

 

苧績み~織りについては後半に続きます。