自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

自然素材の葛を学ぶ~後編~

葛苧にするところまでが、材料採取期の夏場の作業です。

この期間に1年分をすべて採取するため、毎日のように

葛と天気の状態、室と川の状態を確認して材料採取に明け暮れます。

自然素材を対象にしている編み組細工の材料採取と一緒です。

 

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シーズンオフになると、1年かけて糸を績んで布に織りあげていきます。

会津は豪雪地帯なので、冬場の農閑期の仕事としてものづくりがありますが、

冬場も温かく気温が安定している遠州地方では、一年中農作物が育つため、

糸績みや織りは農作業を終えた夜の仕事だったそうです。

農家の女性のおこずかい稼ぎでもあったようです。


前編からの続きです。

 

 

6.糸績み

 

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葛苧を用途に沿った幅(私は今回1㎜~3㎜くらい)に指先や針で裂いていきます。

指で裂いた繊維の尾と頭を「葛布結び」で結繋いでいきます。

繊維の長さがどんなに短くても、一本一本を繋いでいけば

一本の葛糸になります。貴重な素材はどんなに短くても無駄にはしません。

糸を結う時には、繊維が絡みやすくなるよう乾いた指先と葛糸の潤滑油として、

唾を付けます。

 

糸正直

土台となる糸の質が、作品の良し悪しを決める。

均等で平らな糸が績めてこその、美しい織りになるのです。

 

裂いていくのも、結っていくのも、根気のいる細やかな作業です。

この作業をなるべく少なくするためにも、枝分かれや根分けしてない

長くて真っすぐな繊維を採取することが大事なのです。

材料採取によって、後の作業負担や作品の品質等、

すべてに影響してくるので、これだけは何年かかけて経験を

重ねて学ぶしかないようです。

 

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糸を結っていくとき、苧桶という箱を用意します。

左に裂いた繊維を、右に結った糸を、上からふんわり重ねて入れていきます。

わたくしかつて、栃木県那須大麻博物館館長が開催している

麻糸を績むよりひめ講座を受講したことがありますが、

麻糸(からむしも同じかな)績みよりかは、葛糸結びの方が断然楽です。

 

 

7.ツグリ作り

 

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葛糸を八の字に巻いて「ツグリ」を作ります。

これは、織るための舟形の杼(シャトル)に、糸がからまらないように

設置するため、糸の束をまとめたものです。

 

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苧桶をひっくり返して取り出した糸の塊から、

太さもまばらで、結び目も頼りない繊細な(下手ともいう)糸を

からまらないように一本引き出していく作業はとっても慎重。

重しには米ぬか(または小豆)を使います。

ポイントは、常に中心軸に沿わせて糸を巻いていくこと。

これを誤ると、後々とんでもなく痛い目みることになりました。

経験から、学ぶのです。


8.葛布織り

 

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さて、いよいよハイライト!

よく体験である機織りはこれですが、布になるまでの機織りは全体の1割ほど。

編み組細工もそうですが、材料作りが全体の9割以上です。

編む織る技術はもちろん作品に影響しますが、

まずは良い材料が揃えられない限りはここにも至れません。


このワークショップでも、織るのは3時間ほどでした。

(経糸の整経はすでに済んだ状態で織り始め。ありがたいです。

整経が入ると、この工程もまたとても大変なのです。)

 

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経糸は紡績木綿糸を使用。

作品によっては、手繰りの木綿糸を経糸に使うこともあるそうです。

木綿の糸繰り工程を女将さんが見せてくれました。

 

 

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今回私がお世話になった機。葛布は基本高機のようです。

織る時はツグリを水で湿らせます。

乾燥すると布が波打ってしまうので、湿り気を絶やさないことが大事。

編み組細工でも、水加減によってやり易さや作品の表情がだいぶ影響します。

 

 

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シュッ、トントン。

つぐりを入れた杼を経糸に通し、軽く叩く。

葛布の特徴は、撚りをかけない平糸で織っていくことです。

艶やかな平糸を潰さないように織っていくことで、光沢感が浮き上がって、

キラキラとした美しい布に織りあがります。

 

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今回は途中で葛苧をインド藍(青)とウコン(黄)で染めました。

藍で染めた葛糸を途中で織りこんでみました。

 

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9.房処理と砧打ち

 

織りあがった布の両端の経糸は、好みの本数ずつ束ね、

解けぬように房を作ります。

飛び出た端部分をすべて鋏で切り落とし、最後の仕上げとして砧打ち。

 

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布を強く丈夫にし、光沢を出すために、木槌で糸を叩いていきます。

織りの歪みが出ていた布が、真っすぐ艶っとした光沢を持ちました。

 

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ちょっと引きがきつかったり、糸が乾燥していたり、

結びが綻んでいたり、機を踏み間違ったり、

素直に正直に全部が布の表情となっています。うん、愛おしい。

 

 

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葛布の修了書!

こんな小さな布が仕上がるのに、なんとたくさんの工程があることでしょう。

邪魔扱いの雑草からこんな素敵な繊維が生まれること、

自然の神秘と限りない可能性を感じる、素晴らしいワークショップでした♪