自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

自然素材の葛を学ぶ~知識編~

 

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かつて金谷掛川地区は、欧米向けに葛布の壁紙製造輸出の一大産地でした。

現在残る遠州地方の葛布工房は3つだけ。

主催の大井川葛布はそのひとつで、葛布製品の制作販売、

技術継承、歴史研究、情報発信等幅広く活動をされています。

 

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フレンドリーな親方と女将さんは、葛布に関するあらゆる情報を

惜しまずに、何でもかんでも細かくご教授くださいました。

自然布やファッション、伝統技術や民俗学に興味のある方には

とても濃密で興味深い内容です。

強く、参加をおススメします!

 

学んだ葛に関する知識を、簡単にまとめておくことにします。

 

 

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害草扱いされている葛って、実はすごいのですよ。

根っこは澱粉質がジャガイモ以上の葛粉に、

根を乾燥させると解熱剤の葛根湯に、

葉は家畜の大好物飼料になり、種から油が採れ、

強力な根を張る蔓は二酸化炭素吸引や土留めの緑化植物、

そして繊維はこんなに美しくて丈夫な葛布になるのです。

雑草なんてものじゃない!

余すところなく使える優秀な自然素材ではありませんか。

 

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その歴史は古く、6000~7000年前の時代から、

織り布としてはアジア最古のものなのです。(繊維としては大麻がもっと古い)

日本では、古墳の銅鏡包み、平安の貴族衣装、奈良の大仏材料、戦国の甲冑下着、

武士装束などに使われた葛布が見つかっています。

ワークショップではそんな貴重な葛織りものも見せていただきました。

千年以上経っているとは思えない、色と光沢。

繊維素材もしっかりとそのままの状態で残っています。

 

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その後、大麻や苧麻などの栽培植物繊維の拡大により、

衣服や織物としての葛布は衰退していきます。

軽くてサラっとシナっとスルっとした素材から、実は麻布や藤布と言われて

いる歴史的保存衣装も葛布だった、みたいなことがあるそうです。

 

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江戸時代後期の襖紙から葛布が見つかり、

明治維新以降外来文化の影響か、壁紙素材として使用されるようになりました。

戦後は主に輸出壁紙材として全盛を迎えることとなりますが、

昭和40年代には円高の影響で一気に衰退を迎えることになります。

米国元大統領、欧米VIP館、国内では博物館や美術館の壁紙として

葛布の需要が多かったそうです。

 

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親方の研究熱心なこと。

ただ葛布を織るだけではなく、国内外各地に飛んで葛布の研究に勤しんでいます。

時代の流れから縮小した葛布の再考に向けて、

歴史研究、後継者育成、技術継承、制作販売等幅広く取り組みをされている

活動内容には、私が現在携わっている編み組細工の今後を

考える上でもとても勉強になる時間でした。

 

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このワークショップの開催趣旨は、葛布の継承と発展、

そして、手仕事の復権をとおして新しい時代のパラダイムを見通すことでした。

衣類も、食べ物も、住まいも、生活雑貨も、

豊かな自然の中に自生している植物からいただいた素材から

暮らしに必要となるものを作ってきた日本。

葛布を介し、自然と共存した新しい時代の生き方について

考えさせていただきましたーー!

 

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参加者は遠い方で福岡大阪など、各地から織りや染めに興味のある方が20名ほど。

皆さんの経験や情報もとても興味深く、5日間は内容が濃すぎてあっという間でした。

この尊い葛布の価値を共有した参加者のみなさまと、

たくさんの智慧と哲学をご教授いただきました親方と女将さんに、

心から感謝します。ありがとうございました!

 

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