自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

クルミ細工立ち上げ

 

夏休み前に用意したクルミの材料で、籠の立ち上げが始まりました。

今回の先生は、生活工芸友の会の会長五十嵐三美さんです。

 

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三美会長はたくさんいる工人さんの中でも、

編み組細工だけで生計をたてられている数少ないおひとりです。

実は52歳まで役場職員として勤務し、生活工芸館の仕事に従事する内に

編み組細工の面白さに夢中になり、役場を早期退職されてから個人で技を磨いて、

現在も個人で活動(ヤマト)を続けております。


現職中から、編み組細工の自立した活性化に力を入れるべく、

友の会の会長に就かれ、経済産業省認定の「伝統工芸品」指定取得にも

尽力していた、現在の三島町編み組細工のビッグキーパーソンです。

 

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三島町編み組細工には伝統工芸士の方もたくさんいますが、

それは一定の基準に則った技術資格であり、伝統工芸士は取得していない

高度な技術を持った工人さんもわんさかいます。

会長もそのおひとり。


会長、もと役場職員とは思えないほど、大変商売人デス。


マーケットの分析、ニーズの調査、効率的な作業工程、

損益計算、ターゲットへの情報提供を徹底して、個人的なファンが全国にいます。

「奥会津編み組細工」という伝統工芸品への価値ではなく、

「五十嵐三美」という個人が作る編み組細工への信頼を確立しているのです。

そこには決して、「伝統工芸士」という資格に劣らない

高度な技と耐久性、デザインの斬新さ、取引の正確さがあります。

 

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会長のご商売は基本直接販売、縦と横のつながりで口コミで広がるようです。

「間違いない!ここで購入すれば大丈夫!」

まさに編み組細工のトップランナーの地位を確立しています。

信頼からの紹介が、新しい信頼を生んでファンが増えていく。

とても理想的で尊敬する職人、作家、ビジネスとしてのお姿です。

 

しかも会長、ご自分の作品を車に積んで各地に行商しがてら、

趣味の渓流釣り行脚を楽しんでいるのです。

全国に求めてくれるお客様がおり、お客様に商品を運びがてら

ご自身の好きなことも満喫するビジネススタイル。

最近注目するノマドワークやフリーランスなど、

近未来的な働き方の象徴のような気がします。うらやましい。。。

 

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こんな会長の作る作品は、「商品」なのかと思いきや…

『「商品」を作るのは楽しくない。

材料と語り合いながら出来上がる「作品」だと思って創るから楽しい。』

 

とても研究熱心で、新しい作品にも積極的に取り組まれています。

求められる高質な「商品」を作ると同時に、ご自身の好奇心や挑戦心を

注ぎ込む「作品」の制作でもあるようです。

職人としてのプライドと、作家としてのパッションのバランス。

私は何より会長のこのバランスが好きです。

 

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好きなことを仕事として、自分が生み出したものを求めてくれる

お客様がいて、その技術=人として信頼してくれる人のつながりがあり、

作家として、職人として、商人として、自立している工人さんとして、

目指すべきひとつのモデルだと感じています。

 

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さて、こんな素晴らしき大先生から教えていただきました。

ただ、なんと、現在編み方については町民外への技術継承は非公開なのです。

そのために、私たちアカデミー生は参加にあたり三島町に住民票を移したのです。

 

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クルミと山ぶどうの籠の編み方はほぼ同じで、

一流の技術を小さな小さなちょっとしたコツまで惜しみなく教えていただきます。


本当にわずかなコツや加減で、完成作品はだいぶ変わります。

マニュアルや見よう見まねでやってみても、こういった点を

教えていただけるとないではだいぶ差があるように思います。

 

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と言っても、そのコツもやり方も、工人さんによって異なります。

現役工人さんたちはみんな、かつて見よう見まねでなりながら、

何度も何度も繰り返して、それぞれにやり易い、納得のできる

技を編み出していったのです。

「盗む」ものであった技を、「教える」ということすら、

編み組細工の中ではつい最近なのです。

なんという貴重な機会。

 

これからたくさんの工人さんたちの指導を受けながら教えていただく

コツや技を、ひとつひとつ噛み締め、自分のものとして消化していけるように

なりたいと思います。