自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

山の神感謝祭

 

 

9月10日は、三島町編み組細工が伝統工芸品に認定された日。

この日にちなんで、編み組細工を取り囲む三島町の山に感謝を届ける

祭事を行っています。

 

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雨のたびに勢い良く伸びる雑草。

吸い込まれてしまいそうな幾千に輝く星空。

どこからともなく不法侵入する限りない虫虫虫。

太く高く伸びる蔓から血潮のように溢れ出す樹液と水。

一粒の米から万倍の実りを結ぶ稲穂の輝き。

 

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暮らしを取り囲む自然に畏敬の念を覚え、

当たり前のようなこの流れの中から、確かに、間違いなく

超自然的な何か、神のようなものが宿っているような感覚がある。

私たちがこうして生きていられると言うことは、

まさにこの三島町の自然、山の神の恵みがあるからなのだ。

 

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 実りを控えたこの時期、三島町の各集落で祭事が行われます。

都内で会社勤めをしながら生活しているとき、「神」の存在や

「自然」の存在を近くに感じるのはごく稀で、

祭りについても「イベント」という感覚があり、

恥ずかしながら感謝や祈りの機会という認識は希薄だった。

 

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自然の恵みにより生かされているこの地域での生活からは、

自然と人間の暮らしが常に同等のものであり、

山の神の力(自然の力?)によって生かされているのだという感覚が

近くなったような気がします。

 

編み組細工の活動拠点となっている生活工芸館の前に

生活工芸友の会、伝統工芸士、工人さん、アカデミー生等関係者が集まり、

祝詞と玉串を捧げました。

 

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神主は先日の山ぶどう材料作りをご指導いただきました

伝統工芸士の青木基重さんです。

基重さんはかなり多才で、数あるお仕事?の本職は宮司さんなのです。

山の神感謝祭の祝詞は、毎年すべて基重さんが考えて作られています。

自らも編み組細工に携わるいち工人として、ふたつと同じ素材はない

自然物との出逢い、その恵みに対する思いが溢れた内容でした。

 

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また、宮司業と並行して小学校の教員を経て、校長まで勤め上げられていました。

編み組細工との出逢いは、定年後から20年。

もちろん田んぼも畑も耕し、かつてはたばこ栽培や建設業なども

されていたそうです。

 

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編み組細工に携わる人の多くは、作ることが中心の工人さんです。

多くは身近な人が作るのを見て覚え、試し、失敗し、研究して、編みだし、

作るを繰り返してきた工人さんたち。

そのため、作品を作ることには長けていますが、作り方を「教える」という

ことについてのプロではありません。

マニュアルもなければ正解があるわけでもない。

それぞれの感覚と手で、その時の素材の声を聞きながら作っていくもの。

 

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そんな中「伝統工芸士」という立場にいる工人さんには、

伝統的技術を伝えていくという任務があります。

基重さんはもと校長先生ということもあり、教え方が大変分かり易く、

計画的に整然とご指導をしてくださいます。

 

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伝統工芸士というお立場ながら、ここ数年はスランプで、

なかなかご自身が納得できる作品ができないことが続いているそう。

しかし、そんなときでも立ちどまるのではなく、ただただ日々向き合うこと。

ダメな時の自分を受け入れた、ひとめひとめ編み続けること。

 

 


努力と忍耐

 

 

「伝統」を伝統として守り、伝えていくために、コツコツと、

小さな努力を重ねていくことの大切さを教えてくださることと、

多様なお立場から、生涯現役で活躍し続けるお姿に勇気を頂ける存在です。

 

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材料を恵んでくれる山への感謝、編み組細工を繋いだ歴史と先祖への感謝、

現在こうして携われることへの感謝を忘れずに、

一日一日を大切に過ごしていきたいと思います。