自然と暮らしとものづくり

福島県奥会津三島町2017年度第1期生活工芸アカデミーの日々を綴ります

ヒロロ採取

二百十日

立春から210日を過ぎる頃から、ヒロロ採取が始まります。

200種類くらいあるスゲのうち、ミヤマカンスゲとオクノカンスゲの

二種類のスゲを、ここ会津の方言で「ヒロロ」と呼んでいます。

 

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1本1本を綯って縄にして使用します。

現在では一般的に、ヒロロ細工の縦縄として使用しています。

大変水はけが良く、昔の雨具として使われていた蓑は

ヒロロで作られているものが多いのです。

へ~、稲藁だと思ってた。

 

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見た目はニラ、です。

沢沿いの湿地帯斜面に、ニラみたいにシュッシュッと上向きに群生しています。

育成のために、採取後2年~3年あいだをあける必要があるので、

工人さんたちはいくつか採る場所を決めているようです。

 

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今回は、三島町指折りの山男殿ガイドで、もはや2度と辿り着けない

山奥のヒロロ群生地帯にご案内いただきました。

前回の山ぶどうもそうでしたが、道なき道と、というか、

ありえないような絶壁斜面の草木を切り倒しながら

道を作って山を登っていくのです。

 

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山男殿はここへは5年位前に来たそうです。

どうしてまたこの場所に辿り着けるのですか?

という質問への回答を、困っていました。(笑)

もはや野生の勘としか言いようがありません。

本人も、なんでかわからないけどわかるのだそうです。

 

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そして、70代80代のベテラン大先輩方とご一緒させていただいたのですが、

とんでもないのです。

この年齢の方には、電車で席を譲るではないですか。

重いものとか、危険とこととか、気を遣ってしまうではないですか。

ところが、私なんて滑って転んでずり落ちて、息切れしながら姿を見失いながら

やっとやっとでついていく山男殿を、先輩方はガシガシ追って行くのです。

 

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収穫量もスピードも到底かないません。参りました。

山深い地域で育ち、暮らしている方々の身に着いた能力なのだと思います。

山道での身のこなし、荷物の背負い方、鮮やか過ぎてかっこよよすぎる。

 

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さて、ヒロロの採り方なのですが、根元を足で踏みつけて

根が抜けないようにして、葉を引き抜きます。

長さ的には30㎝以上ある方が使い易いです。

 

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採取したヒロロは、根を解して短い葉を振るい落とし、直射日光で1日乾燥、

その後風通しの良い日陰で乾燥させます。

アカソモワダと比べると、ヒロロ細工の素材の中では材料準備は一番簡単かも。

これでやっとヒロロ細工の材料採取が全部完了しました。

 

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いや~大変だ(笑)どれも厳しい自然との闘いです。

でも、しかし、これが大変楽しいのであります。うん。

だってこんな山に入るなんて、レジャーではなかなかできない。

ハイキングがいかに人工的なレジャーかを感じます。 

 

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すでにある道を歩くのは安全だし楽だけど、

どっちに何があるのかわからない、どこを歩いてもいい世界に

道を開いて進んでいくワクワク感ってたまらない!(超安心のガイド付き)

下界(?)では出逢えることがないような、小さくて大きな、

未知数に広がる自然界にたまらなく興奮します。

 

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ものづくりはもちろんだけど、そのものが出来上がるまでにある、

見に行かなければ得ることがなかった世界と出逢えることが、

何よりも尊い価値だと感じるヒロロ採取でした。

 

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